3か月に1回の点滴で片頭痛を予防する【新薬ビエプチについて】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

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3か月に1回の点滴で片頭痛を予防する【新薬ビエプチについて】

3か月に1回の点滴で片頭痛を予防する【新薬ビエプチについて】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

2026年10月23日

3か月に1回の点滴で片頭痛を予防する【新薬ビエプチについて】

1.新しい片頭痛予防薬「ビエプチ」が承認されました

今回は、新しい片頭痛の予防薬【ビエプチ】について紹介したいと思います。
ビエプチ(一般名:エプチネズマブ)は、2026年9月16日に国内で承認された新しいCGRP関連薬です。2026年10月23日(本日)現在、まだ発売されておらず、薬価も決まっていません。
現在日本で使用されているCGRP関連抗体薬(内服薬は抗体ではないので含まれません)には、エムガルティ、アジョビ、アイモビーグの3種類がありますが、いずれも皮下注射のお薬です。
今回のビエプチは、国内で初めて承認された点滴静注タイプのCGRP関連抗体薬です。
まだ実際に使用した経験はありませんが、これまでの薬とどのような違いがあるのか、臨床試験の結果などをもとに考えたいと思います。

2.ビエプチはどのような薬?

ビエプチは、片頭痛の発症に関係するCGRPという物質の働きを抑える薬です。
CGRPは片頭痛の発症に深く関係する物質で、ビエプチは下図のように、CGRPに結合して、その作用を抑える抗体製剤です。

作用の仕組みは、すでに使用されているエムガルティやアジョビと基本的に同じです。

エムガルティ、アジョビが皮下注射の製剤であるのに対して、ビエプチは100mgのバイアル製剤を生理食塩液100mLのバッグに希釈して点滴する薬です。

通常、成人では100mgを12週間に1回、約30分かけて点滴投与します。
つまり、約3か月に1回の点滴で片頭痛を予防する薬ということになります。毎日薬を飲む必要がなく、毎月注射をする必要もありません。(アジョビにも3か月ごとに1回3本を皮下注射する方法があるため、3か月に1回の投与という点はビエプチだけの特徴ではありません。)

3.ビエプチの効果は?【SUNRISE試験】

ビエプチの効果については、2025年に国際頭痛学会の学術誌『Cephalalgia』に発表されたSUNRISE試験で検証されています。

この研究では、日本人305人を含む慢性片頭痛患者978人を対象に、ビエプチの効果と安全性が調べられました。
慢性片頭痛とは、月に15日以上頭痛があり、そのうち少なくとも8日が片頭痛の特徴を持つ状態が3か月を超えて続くものです。
ビエプチ100mgを投与した患者さんと、プラセボ(薬の成分が入っていない偽薬)を投与した患者さんを比較しました。
その結果、投与後12週間の月間片頭痛日数は、
ビエプチ100mg:平均7.2日減少
プラセボ:平均4.8日減少
となりました。
プラセボでも頭痛日数が減少していますが、ビエプチを投与した患者さんでは、それよりさらに約2.4日多く減少しており、統計学的にも明らかな効果が認められました。
また、ビエプチは点滴を行った翌日から片頭痛を予防する効果が認められています。
ビエプチは点滴で直接血液中に投与するため、皮下注射の薬と比べて速やかに血中濃度が上昇します。このことが、早い段階から効果が現れる理由の一つと考えられます。
エムガルティやアジョビなどの他のCGRP関連薬と比較したビエプチの効果がどうなのかが気になりますが、これらの薬を直接比較した十分な研究はなく、現時点でどの薬が最も効果があるのかはわかっていません。
また、SUNRISE試験では、過去にCGRP関連予防薬を使用した患者さんは除外されています。一方、海外では、ほかのCGRP関連抗体薬で十分な効果が得られなかった患者さんでも、ビエプチによって頭痛が改善したという後ろ向きの報告もあります。今後、こうした患者さんに対する効果についても、さらに検討が進むことを期待しています。

4.ビエプチの副作用は?

SUNRISE試験では、ビエプチ100mgを投与した患者さんの9.2%に、薬との関連があると判断された副作用があったと報告されています。
主な副作用には、点滴に伴う過敏症反応などがあります。過敏症反応としては、発疹、かゆみ、蕁麻疹などです。
これまでの皮下注射製剤では、注射した部位の赤み、腫れ、かゆみなどが問題になることがあります。ビエプチでは皮下注射部位の反応を避けられる一方で、点滴中のアレルギー反応などには注意が必要です。そのため、点滴中は患者さんの状態を確認しながら投与する必要があります。

5.ビエプチのメリットとデメリット

ビエプチの最大のメリットは、12週間に1回の投与で片頭痛の予防治療を継続できることだと思います。毎日薬を飲む必要がなく、頻繁に通院することが難しい患者さんにとっては良い治療となる可能性があります。
また、これまでの皮下注射製剤で注射部位の反応が強かった患者さんにとっても、新たな選択肢になるかもしれません。
一方で、デメリットもあります。
皮下注射であれば短時間で投与が終了しますが、ビエプチでは約30分の点滴が必要です。点滴の準備や投与後の確認も含めると、ある程度の時間を確保しなければなりません。
もう一つが費用です。
2026年10月23日(本日)現在、ビエプチの薬価はまだ決まっていません。
既存のCGRP関連抗体薬は、どれも1か月あたりの薬剤費が10割負担で4万円前後になっています。ビエプチの実際の費用は薬価が決定してからでなければわかりませんが3か月分の治療薬を一度に投与することになるため高額な薬になる可能性があります。
また、投与しても十分な効果が得られない患者さんもいます。3か月ごとの投与は便利ですが、効果が不十分だった場合にも、投与した薬を途中で取り除くことはできません。
通院回数が少ないというメリットと、点滴時間や費用などのデメリットを考えて選択する必要があると思います。

6.最後に

ここ数年、CGRP関連薬の登場によって片頭痛の治療は大きく進歩しました。今回、新たに点滴製剤が加わり、治療の選択肢がさらに広がることは大変喜ばしいことだと思います。
患者さんによって薬の効果や副作用、希望する治療方法は異なります。新しい選択肢が増えたことで、これまで以上に患者さん一人ひとりに合った治療ができるようになることを期待しています。

参考文献

・Yu S, Matsumori Y, et al. Efficacy and safety of eptinezumab in a predominantly Asian population with chronic migraine: Results of the randomized, double-blind, placebo-controlled SUNRISE trial. Cephalalgia. 2025;45(10). doi:10.1177/03331024251386095.
・ビエプチ点滴静注100mg 添付文書.2026年9月.

おくだ脳神経外科クリニック
院長 奥田 智裕
日本頭痛学会認定 頭痛専門医

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