2026年6月15日

2026年5月、約9年ぶりに新版の
【認知症疾患診療ガイドライン2026】
が発刊されました。
今回の改訂では、従来の「認知症になってから治療する時代」から、
“認知症になる前に見つけて介入する時代”
への大きな転換が示されています。
今回は、2026年版ガイドラインの注目ポイントを解説します。
1.最大の変化は「早期診断」の重要性
今回のガイドラインで特に重要なのが、
アルツハイマー病連続体(AD continuum)
という考え方です。
これは、
症状が出る前→軽い物忘れの段階(MCI)→認知症を発症した段階
を、別々の病気ではなく「連続した病態」として捉える考え方です。
つまり、
「認知症になってから対応する」のではなく、
“軽度認知障害(MCI)の段階で見つけることが非常に重要”
と位置づけられました。
2.抗アミロイドβ抗体薬が本格的にガイドライン入り
今回の改訂で最も話題となっているのが、
レカネマブ(レケンビ)

ドナネマブ(ケサンラ)

などの「抗アミロイドβ抗体薬)」です。
これまでの認知症治療薬は、
「症状を和らげる」ことが中心でした。
一方、これらの新しい薬は、
脳内のアミロイドβ蓄積を減少させ、病気の進行そのものを遅らせる可能性
が期待されています。
ただし、アルツハイマー病による軽度認知障害、軽度認知症の方(比較的早期のアルツハイマー病)が対象で誰でも使用できるわけではありません。
つまり、認知症が進行してしまった方には適応がありません。そういう意味でも物忘れの早期発見、早期診断は重要なのです。
3.MRIの重要性がさらに高まっている
脳神経外科クリニックとして特に重要なのがMRI評価です。
新しい抗体薬では、
ARIA-E(脳浮腫)
ARIA-H(脳微小出血)
と呼ばれる副作用評価が重要になります。
そのため、
治療前MRI
定期的MRIフォロー
が非常に重要視されるようになりました。
また、認知症診療では
・慢性硬膜下血腫
・正常圧水頭症
・脳腫瘍
・脳血管障害
など、“治療可能な認知症”を見逃さないことも大切です。
4.「物忘れ=認知症」ではない
ガイドラインでも強調されているのが、認知症にはさまざまな原因がある
という点です。
代表的には、
・Alzheimer型認知症
・Lewy小体型認知症
・血管性認知症
・前頭側頭型認知症
などがあります。
さらに、
・睡眠障害
・うつ病
・薬剤性
・ビタミン欠乏
・慢性硬膜下血腫
など、改善可能な病態が隠れていることもあります。
「年齢のせい」と決めつけず、早めの相談が重要です。
5.これからの認知症診療は「早く気づき、早く支える」
2026年版ガイドラインでは、単に薬を処方するだけではなく、
・リハビリ
・運動
・社会参加
・家族支援
・介護連携
などを含めた包括的支援の重要性も強調されています。
認知症は「何もできなくなる病気」ではありません。
早期に適切な診断と支援につながることで、
本人らしい生活を長く維持できる時代になってきています。
当院でも認知症専門医による物忘れ外来を行っています。
当院では、
物忘れ外来にて
・MRI検査
・MCI(軽度認知障害)評価 (認知機能検査)
・認知症鑑別診断
・専門病院との連携
を行っています。
「最近もの忘れが増えた」
「家族の様子が気になる」
など、お気軽にご相談ください。
院長 奥田 智裕