まぶたがピクピクするのは病気?【片側顔面けいれんの原因と治療について】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

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まぶたがピクピクするのは病気?【片側顔面けいれんの原因と治療について】

まぶたがピクピクするのは病気?【片側顔面けいれんの原因と治療について】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

2026年10月18日

まぶたがピクピクするのは病気?【片側顔面けいれんの原因と治療について】

まぶたがピクピクするのは病気?【片側顔面けいれんの原因と治療について】

まぶたが勝手にピクピクする症状は、日常生活でも比較的よくみられます。
多くは疲労やストレスなどによる一時的なものですが、中には「片側顔面けいれん」という病気が原因となっている場合もあります。今回は、まぶたのけいれんの原因や、内服薬・ボトックス注射・手術による治療について解説します。

① 眼瞼ミオキミアと片側顔面けいれんの違い

・眼瞼ミオキミア
眼瞼ミオキミアは、まぶたの一部が細かくピクピクと動く状態で、特に下まぶた(下眼瞼)に多くみられます。疲労、睡眠不足、ストレス、カフェインの過剰摂取などがきっかけとなることがあり、多くは数時間から数日で自然に改善します。通常、症状はまぶたの一部に限られ、頬や口元まで広がることはありません。

・片側顔面けいれん
片側顔面けいれんは、顔の片側の筋肉が自分の意思とは関係なく収縮する病気です。
最初は目の周囲のピクピクから始まることが多く、徐々に頬や口元に広がることがあります。症状が強いと勝手に目が閉じ、日常生活に支障をきたすこともあります。自然に治ることは比較的少なく、長期間、断続的に続く場合があります。

② 片側顔面けいれんの原因

最も多い原因は、脳の血管が顔面神経の根元付近を圧迫することです。顔面神経が過剰に興奮することで、意思とは関係なく顔の筋肉の収縮が起こります。原因血管には前下小脳動脈(AICA)、後下小脳動脈(PICA)、椎骨動脈などがあります。

ただし、すべての患者さんで血管による圧迫が確認できるわけではありません。まれに脳腫瘍、血管奇形、脱髄性疾患などが原因となることもあり、検査をしても明らかな原因が特定できない場合もあります。
当院では必要に応じてMRI検査を行い、顔面神経周囲の血管やほかの病気の有無を確認します。

この画像は「CISS (シス)」という脳神経と脳血管を見るためのMRI画像です。
黄色矢印のヒモのようなものが顔面神経、青が聴神経、赤が椎骨動脈です。
顔面神経を圧迫しているのは緑矢印の後下小脳動脈(椎骨動脈の分枝)です。顔面けいれんでは、血管による神経の圧迫は顔面神経の根本(緑矢印付近)で起こります。不思議なことに顔面神経の根本以外に血管が当たってもけいれんは起きません。

③片側顔面けいれんの治療

1. 内服薬による治療
症状が比較的軽い場合などには、カルバマゼピン(テグレトール)、クロナゼパム(リボトリール)、ガバペンチン(ガバペン)、バクロフェン(リオレサール)などのてんかんの薬を使用することがあります。
神経の興奮を抑える薬ですが、効果は必ずしも十分ではなく、眠気、ふらつき、倦怠感などが問題になることがあります。大幅にけいれんの出る時間が短くなったり、けいれんが弱くなったりと効果が得られることもあります。

2. ボトックス注射による治療
内服薬で効果が不十分なときや、眠気などの副作用が強い時にはボトックス注射を行います。
ボトックス注射は片側顔面けいれんに広く行われている治療です。ボツリヌス毒素製剤をけいれんする筋肉に少量ずつ注射し、神経から筋肉への信号を一時的に抑えます。当院でも片側顔面けいれんに対するボトックス注射を行っています。


上図の赤丸の部位の筋肉、6-8カ所に0.1ml程度のボトックス注射を行います。注射は、少しでも痛くないように事前に顔をアイスノンで冷やしてから行っています。
研究によって差はありますが、約80〜90%以上の患者さんで症状の改善が報告されています。注射後数日で効果が現れ始め、一般的に約3か月程度持続します。
ボトックス注射は症状を抑える治療であり、効果は永久的ではないため、症状に応じて通常3〜4か月程度の間隔を目安に繰り返します。
副作用には、眼瞼下垂、目の閉じにくさ、顔の左右差、注射部位の内出血などがありますが、多くは一時的で、薬の効果が弱まるにつれて改善します。注射位置や量の調整でリスク軽減を図ります。

3. 手術による治療(微小血管減圧術)
根本的な治療として、微小血管減圧術(MVD)があります。耳の後ろから開頭し、顔面神経を圧迫する血管を神経から離す手術です。約9割の患者さんでけいれんの消失が期待でき、長期的な治癒を目指せます。ただし、術直後に消失せず数か月かけて改善する場合や、いったん消失しても数%程度で再発する場合があります。
手術には聴力障害、顔面神経麻痺、髄液漏などのリスクがあり、まれに脳梗塞など重篤な合併症も生じます。報告によって差はありますが、永続的な聴力障害は約2〜3%、永続的な顔面神経麻痺は約1〜2%程度とされています。

上の図が手術の説明です。Facial nerve=顔面神経です(図の左)。血管は年齢を重ねると屈曲や蛇行が強くなります。血管が顔面神経に接触し、拍動して顔面神経を刺激しているところを手術では顕微鏡で見ながら確認します(図の真ん中)。血管と神経の間にフェルトや綿などのクッションを入れて血管と顔面神経を離し、血管の刺激が顔面神経に伝わらないようにします(図の右)。手術中に顔面神経の興奮をモニタリングしており、顔面神経の異常な興奮がおさまったことを確認して終了します。

微小血管減圧術は、脳神経外科では古くから行われている確立された手術であり、一か八かのとても難しい手術というわけではありません。
しかし、脳腫瘍やくも膜下出血など、病気そのものが命に関わるために行う手術とは少し性質が異なり、片側顔面けいれんは、基本的には治療をしなくても命に関わる病気ではありません。
患者さんの生活の質(QOL)を改善するための手術でQOLの手術とも言います。
そういう意味で、脳神経外科医にとって、特別な緊張感のある手術だと考えています。

次のような方では手術を検討してみてはどうですか、と説明することが多いです。
・比較的若く、今後、長期間にわたり症状が続くと予想される方
・けいれんが強く、仕事や日常生活に大きな支障がある方
・ボトックス注射で十分な効果が得られない方、または注射に抵抗がある、副作用で継続が難しい方
・定期的なボトックス注射より根本的な治療を希望する方

比較的若い患者さんや、けいれんが強く日常生活に支障が出ている患者さんでは、手術を積極的に検討してもよいのではと考えています。
一方で、ボトックス注射で症状が十分に抑えられている場合や、ご高齢の患者さんでは、無理に手術を行う必要はないと思います。
また、年齢だけで決めず、症状、MRI所見、全身の状態、ご本人の希望を総合して判断することが重要だと考えています。

④当院での診療について

まぶたのピクピクは一時的な症状のこともありますが、片側顔面けいれんが隠れている場合もあります。当院では診察と必要に応じた原因検索を行い、内服治療からボトックス注射まで対応しています。手術による根本的な治療が望ましい患者さんには、専門医療機関をご紹介します。
まぶたのピクピクが続く、口元まで引きつるといった症状がある方は、お気軽にご相談ください。

参考文献
Sindou M, Mercier P. Microvascular decompression for hemifacial spasm: Outcome on spasm and complications. A review. Neurochirurgie. 2018.

Botulinum Toxin for the Treatment of Hemifacial Spasm: An Update on Clinical Studies. Toxins. 2021

おくだ脳神経外科クリニック

院長 奥田 智裕 (脳神経外科専門医)

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