まぶたが下がってきた 【眼瞼下垂(がんけんかすい)について】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

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まぶたが下がってきた 【眼瞼下垂(がんけんかすい)について】

まぶたが下がってきた 【眼瞼下垂(がんけんかすい)について】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

2026年10月22日

まぶたが下がってきた 【眼瞼下垂(がんけんかすい)について】

1.まぶたが下がる原因は?

まぶたが下がって目が開きにくくなる状態を「眼瞼下垂(がんけんかすい)」といいます。まぶたが下がると眼科を受診する方が多いですが、脳神経外科でも眼科からの紹介や患者さんから直接相談を受けることもある症状です。
眼瞼下垂の原因として最も多いものは、加齢によって次第にまぶたを持ち上げる筋肉や腱が弱くなることで、その場合は眼科や形成外科で手術を受ける方もいます。
しかし、突然まぶたが下がってきた場合には、脳や神経の病気が原因となっていることがあります。
特に注意が必要なのが「動眼神経麻痺」という病気です。脳動脈瘤などの脳血管の病気が原因となっていることもあり、場合によっては命に関わることがあるからです。
今回は、脳神経外科で注意して診療している眼瞼下垂の原因について説明したいと思います。

2.動眼神経麻痺とは?
動眼神経は目の動き、まぶたの開閉、瞳孔の大きさの調節をしている神経です。

まぶたを持ち上げる「眼瞼挙筋」という筋肉を動かしているため、この神経が障害されるとまぶたが下がってきます。
また、動眼神経は眼球を動かす筋肉も支配しています。そのため、動眼神経麻痺では眼球運動が障害され物が二重に見える症状「複視(ふくし)」を伴うことがあります。
さらに、動眼神経には瞳孔を小さくする働きもあります。神経が障害されると瞳孔が大きくなり、光をまぶしく感じる「羞明(しゅうめい)」や、近くの物にピントが合いにくくなる症状が生じることもあります。
つまり、動眼神経麻痺では次のような症状がみられます。
・まぶたが下がる(眼瞼下垂)
・物が二重に見える(複視)
・瞳孔が大きくなる(散瞳)
・光をまぶしく感じる(羞明)

ただし、すべての症状が同時に出るわけではありません。

3.最も注意すべきは脳動脈瘤

急な動眼神経麻痺の原因として、最も怖いものが「脳動脈瘤」です。脳動脈瘤とは、脳の血管の一部が風船のように膨らんだ状態です。
特に、内頚動脈と後交通動脈の分岐部(IC-PC)にできる脳動脈瘤は、動眼神経のすぐ近くに位置しているため、動脈瘤が大きくなることで神経を圧迫し、動眼神経麻痺を起こすことがあります。
下図は「Ⅲ」というのが動眼神経(第Ⅲ脳神経)です。内頚動脈から後交通動脈が分岐する部分にできた動脈瘤がAでもBでも動眼神経を圧迫しています。

また、脳底動脈と上小脳動脈の分岐部(BA-SCA)にできた動脈瘤でも動眼神経麻痺が生じることがあります。
脳動脈瘤が大きくなったり、形が変化したりすることで、近くを走行する動眼神経を圧迫し、ある日突然、動眼神経麻痺が出現した際には、動脈瘤の破裂が近づいている可能性が高いと判断して、「動脈瘤の切迫破裂」として扱います。
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を起こします。前回のコラムで書きましたが、くも膜下出血は死亡率が高い重篤な病気です。動眼神経麻痺が生じた時点で動脈瘤を発見し、適切な治療につなげることが非常に重要です。
そのため、眼瞼下垂が突然現れ、MRIで動脈瘤の切迫破裂が疑われた患者さんは直ちに専門病院を受診していただくようにすぐに紹介しています。
突然、片側のまぶたが下がった場合、特に頭痛や目の奥の痛み、ものが二重に見える症状などを伴う場合には、早急な検査が必要です。

4.海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻

もう一つ、重大な脳の血管の異常によって眼瞼下垂が起こる病気があります。
「海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(かいめんじょうみゃくどうぶ こうまくどうじょうみゃくろう)」という病気です。少し長くて難しい名前ですが、脳の動脈と静脈の間に異常な直接的な血流の繋がりができる病気です。海綿静脈洞は、目の奥にある静脈の集まる場所で、その内部には動眼神経をはじめとする眼球運動に関係する神経が走行しています。この病気では、動脈から静脈へ異常に血液が流れ込むことで静脈の圧力が上昇します。その結果、目からの血流を返す上眼静脈などにうっ血が生じたり、動眼神経が障害されたりします。症状としては、眼瞼下垂のほかに、眼球突出、結膜充血(赤目)、ものが二重に見える症状などがみられるることが多いです。進行すると視力障害を起こすこともあり、静脈の血液の流れ方によっては脳出血などの危険もあります。自然に改善することもありますが、視力障害や危険な静脈逆流がある場合には早急な治療が必要です。治療にはカテーテルを使用した血管内治療が行われることが多いです。

5.そのほかの動眼神経麻痺の原因

ここまで脳の血管の病気について説明しましたが、動眼神経麻痺の原因はそれだけではありません。
糖尿病や高血圧などによる動眼神経の細い血管の循環障害でも、動眼神経麻痺が起こることがあります。そのほか、脳幹の脳梗塞や、多発性硬化症などの炎症性・脱髄性疾患も原因となります。しかし、症状だけでそれらの区別が難しい場合があるため、突然の動眼神経麻痺では脳の血管を含めた画像検査が重要になります。

6.重症筋無力症でもまぶたが下がる

ここまで動眼神経の障害について説明しましたが、神経そのものに麻痺がなくても眼瞼下垂が起こる病気があります。
代表的なのが「重症筋無力症」です。

重症筋無力症は、神経から筋肉へ命令を伝える仕組みが自己免疫(本来は体を守る免疫が、自分自身の体を攻撃してしまう仕組み)によって障害され、筋肉に力が入りにくくなる病気です。全身の筋力低下を起こすこともありますが、目の症状だけが出現する「眼筋型重症筋無力症」という病型もあります。片側のまぶただけが下がることもあり、眼瞼下垂の患者さんを診察する際には必ず考える病気です。
眼筋型重症筋無力症では眼瞼下垂や複視が主な症状で、特に特徴的なのは症状が変動することです。例えば、朝はまぶたが普通に開いているのに、夕方になると下がってくることがあります。また、疲れると症状が強くなり、休むと改善することもあります。重症筋無力症では通常、瞳孔の大きさや対光反射には異常を認めず、動眼神経麻痺との区別のため参考になります。

7.ホルネル症候群による眼瞼下垂

「ホルネル症候群」という病気でも眼瞼下垂が起こることがあります。
まぶたを持ち上げる筋肉には、動眼神経だけでなく交感神経によって支配される筋肉もあります。この交感神経が障害されると、軽い眼瞼下垂が生じます。
動眼神経麻痺との大きな違いは、瞳孔が大きくなるのではなく、逆に小さくなる「縮瞳」を伴うことです。
ホルネル症候群の原因はさまざまですが、特に注意が必要なのが「内頚動脈解離」です。首の血管の壁が裂ける病気で、脳梗塞の原因となることがあります。
また、脳幹の脳梗塞によってもホルネル症候群が起こることがあります。代表的なのが「ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)」で、眼瞼下垂のほかに、めまいやふらつき、飲み込みにくさなどを伴うことがあります。下図のような延髄外側の脳梗塞で起こるため延髄外側症候群と言われます。

8.最後に

眼瞼下垂の原因はさまざまです。加齢により数年かけて起こる眼瞼下垂は重篤な病気がないことが多いですが、突然、または数日かけて起こる眼瞼下垂には脳動脈瘤などの重大な病気が隠れていることがあります。
特に、急に片側のまぶたが下がった場合や、頭痛、目の奥の痛み、物が二重に見える症状を伴う場合には、早めに受診することが大切です。
脳動脈瘤による動眼神経麻痺は、くも膜下出血を起こす前に発見できる可能性のある重要なサインです。
普段はあまり意識することのないまぶたの変化ですが、その症状が重大な病気を発見するきっかけになることもあります。

参考文献

Fang C, et al. Incidence and Etiologies of Acquired Third Nerve Palsy Using a Population-Based Method. JAMA Ophthalmology. 2017;135:23–28.

おくだ脳神経外科クリニック
院長 奥田 智裕
脳神経外科専門医
脳卒中専門医
脳血管内治療専門医

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