突然の激しい頭痛 【くも膜下出血とは?】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

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突然の激しい頭痛 【くも膜下出血とは?】

突然の激しい頭痛 【くも膜下出血とは?】|おくだ脳神経外科クリニック|福岡県糟屋郡篠栗町の脳神経外科・内科【頭痛・脳卒中・認知症の専門医】

2026年10月21日

突然の激しい頭痛 【くも膜下出血とは?】

突然の激しい頭痛 【くも膜下出血とは?】

今回は、私が脳外科医としてこれまで専門にしてきた脳卒中(脳血管障害)について書いてみたいと思います。
まずは、私がこの病気を治療したいと思い、脳外科医になろうと思ったきっかけになった「くも膜下出血」((SAH)(エスエイエイチや、ザーと読みます))についてです。
くも膜下出血は死亡率が高い病気ですが、発症時の脳への障害が軽ければ、適切な治療によって後遺症なく退院できる患者さんもいます。また、重症のくも膜下出血の患者さんでも、治療がうまくいって元気に退院されることもあり、脳外科医にとってやりがいを感じる病気の一つです。
また、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤は、同じ形のものが一つとしてありません。動脈瘤の大きさや形、場所などによって治療方法が異なり、血管内治療(カテーテル治療)では使用するコイルの種類、ステントを使うかどうか、カテーテルの形状など、さまざまなことを考える必要があります。一つひとつの動脈瘤に対して、どのような方法が最も安全で確実なのかを考え、治療を組み立てていくことは、私が脳血管内治療に魅力を感じてきた理由の一つです。

くも膜下出血がどのような病気なのか、どのような治療が行われているのかについて説明したいと思います。

1.くも膜下出血の頭痛は突然起こる

くも膜下出血の頭痛の最大の特徴は、突然、瞬間的に頭痛が起こることです。突然の頭痛とは、テレビを見ているときでも「このCMが流れていたときに頭痛が始まった」と言えるくらい突発的な頭痛です。また、私が研修医の時に担当した患者さんは「頭の中に突然、台風がやってきた」と表現れていて印象的でした。

しかし、くも膜下出血の患者さん全員が、意識を失うほどの激しい頭痛を訴えるわけではなく、比較的軽い頭痛で受診される方もいます。
頭痛の強さだけでなく、突然に始まったという発症の仕方が非常に重要です。

2.くも膜下出血はどのくらい起こる病気なのか?

くも膜下出血は、60歳前後から高齢の方に多く、男性より女性に多い病気です。
日本では、年間の発症率は人口10万人あたり約10〜20人と報告されています。これを身近な人口に当てはめてみると、人口約160万人の福岡市では年間160〜320人程度、つまり福岡市全体ではおよそ毎日1人がくも膜下出血を発症する計算になります。決して多いとは感じない数字かもしれません。
しかし、日本では年間約1万1千人がくも膜下出血で亡くなっており、動脈瘤の破裂予防治療もたくさんされていますがなかなか死亡率が減らない病気だと感じています。

3.くも膜下出血の「3分の1ルール」

くも膜下出血の予後(発症後の死亡率や回復の具合)について、以前から「3分の1ルール」というものが知られています。
・約3分の1は発症後早期に亡くなる(治療できない)
・約3分の1は治療を受けても後遺症が残る
・約3分の1は治療ができ、社会復帰ができる
というものです。
これは大まかな説明ですが、それでも、くも膜下出血は治療がうまくいったとしても、必ず元の生活に戻れるという病気ではありません。発症した時点で重い脳の障害が起こっていることもあり、救命できても寝たきりになったり、記憶障害などの後遺症が残ったりする場合があります。

4.くも膜下出血はなぜ起こるのか?

くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤という脳の血管にできた瘤(こぶ)が破裂することで起こります。

脳動脈瘤は、血管の壁の一部が風船のように膨らんだものです。正常な血管と比べて壁が弱くなっている部分があり、そこに血圧などの力が加わることで破裂します。
脳は「くも膜」という薄い膜に覆われており、その内側には脳脊髄液(脳や脊髄を包む液体)が流れています。この空間を「くも膜下腔」と呼びます。動脈瘤が破裂して、この空間に出血する病気がくも膜下出血です。
脳は硬い頭蓋骨に囲まれているため、大量に出血すると頭の中の圧力(頭蓋内圧/脳圧)が急激に高くなります。その結果、脳が潰されて脳の血流が悪くなり、意識障害や重い脳の障害を引き起こします。

5.くも膜下出血の重症度は何で決まるのか?

くも膜下出血には重症度分類があり、患者さんの意識状態や神経症状などによって、グレード1から5までの5段階に分ける分類がよく使われます。
重症度に大きく関係するのは、破裂動脈瘤からの出血の量によって脳がどの程度障害されたかということです。脳動脈瘤は一旦、破裂しても血液が固まり、破裂部位が塞がって自然に出血が止まることが多いです。出血が比較的少なく、脳への障害が軽ければ、意識がはっきりした状態で病院を受診される方もいます。一方、出血が止まらず大量に出血した場合には、急激に頭蓋内圧が上昇し、深い意識障害や心肺停止に至ることもあります。
ここで重要なのは、破裂した動脈瘤の大きさと、くも膜下出血の重症度は相関しないということです。小さな動脈瘤でも、破裂すれば命に関わる重症のくも膜下出血を起こすことがあります。

6.小さな脳動脈瘤でも破裂する?

脳動脈瘤は、一般的には大きいほど破裂する危険性が高くなります。
一方で、不思議なことに、実際にくも膜下出血を発症した患者さんを診療していると、必ずしも10mmを超えるような大きな動脈瘤ばかりではありません。4〜5mm程度の小さな動脈瘤が破裂していることも少なくありません。これは、未破裂脳動脈瘤の多くが小さなものであり、その一部が破裂していることなどが関係していると考えられます。
つまり、破裂の危険性は大きさだけでは決まりません。動脈瘤のできた場所、いびつな形状、若い年齢、高血圧、複数の動脈瘤があること、家族にくも膜下出血を発症した方がいることなど、さまざまな要因が関係します。

そのため、MRI検査で4〜5mm程度の小型の動脈瘤が偶然見つかった場合には、これらの要素を患者さん一人ひとりについて検討し、患者さんの希望も伺ったうえで、専門病院での精査を勧めています。

7.くも膜下出血の治療 ― まずは再出血を防ぐ

くも膜下出血の治療で最も重要なことの一つは、破裂した動脈瘤からの再出血を防ぐことです。
くも膜下出血を起こした患者さんの多くは、動脈瘤からの出血がいったん止まった状態で病院に搬送されます。しかし、一度破裂した動脈瘤は、放っておくと数時間〜数日以内に再び破裂する危険性があります。
特に発症直後から早期の再出血は危険で、最初の出血では意識がはっきりしていた患者さんでも、再出血によって重症化したり、命を落としたりすることがあります。そのため、できるだけ早期に動脈瘤を治療する必要があります。

動脈瘤の治療には、大きく分けて2つの方法があります。

① 開頭クリッピング術

頭蓋骨の一部を開け、手術用顕微鏡で脳の血管を確認しながら動脈瘤まで到達する手術です。脳の隙間を丁寧に分けて動脈瘤を直接確認し、クリップという小さな金属製の洗濯ばさみのような器具で、動脈瘤の根元を閉じます(上図)。これによって動脈瘤の中に血液が流れ込まなくなり、再出血を防ぎます。

② コイル塞栓術(カテーテル治療)

こちらは頭を開けずに、血管の中から動脈瘤を治療する方法です。
足の付け根や手首などの動脈からカテーテルという細い管を挿入し、脳の血管まで進めます。さらに、その中から直径1mm程度、あるいはそれ以下の非常に細いマイクロカテーテルを動脈瘤の中まで進めます。
このマイクロカテーテルを通して、コイルという非常に細い金属の糸を動脈瘤の中に詰めていきます。コイルを詰めることで動脈瘤の中の血流が停滞し、血液が固まって、再出血を防ぐ仕組みです(上図)。

くも膜下出血の治療では、コイル塞栓術と開頭クリッピング術のどちらでも治療できる患者さんにおいて、コイル塞栓術の方が治療後の生活機能や長期予後が良好であったという研究結果があります。
そのため、現在ではコイル塞栓術が可能な場合には、まずカテーテル治療を検討する施設も多くなっています。

ただし、すべての動脈瘤でコイル塞栓術が優れているわけではありません。動脈瘤がコイルを入れるには小さすぎる、形がいびつでコイルを安定して留置できない、周囲に出血があり開頭による除去が必要であるなど、開頭クリッピング術の方が適している場合もあります。また、動脈瘤の場所や患者さんの年齢などによっても適切な治療方法は異なります。

近年はカテーテルやコイルなどの治療器具も進歩しており、以前は開頭手術が必要だった動脈瘤でも、血管内治療が可能になる症例が増えていてコイル塞栓術が適応される症例が増えています。

8.脳の圧を下げる治療も必要

くも膜下出血では、動脈瘤を治療するだけでなく、出血によって高くなった頭蓋内圧を下げる治療が必要になることもあります。
例えば、出血によって脳脊髄液の流れが悪くなり、脳の中に水がたまる「水頭症」(下図)を起こすことがあります。

その場合には、「脳室ドレナージ」(下図)という細い管を脳室内に留置して、脳脊髄液を体の外に排出することで頭蓋内圧を下げます。

また、重度の脳の腫れが起こった場合には、薬による治療に加え、一時的に頭蓋骨の一部を外して脳への圧迫を減らす手術が必要になることもあります。

9.手術が成功しても安心できない ― 脳血管攣縮とは?

実は動脈瘤の治療がうまくいっても、くも膜下出血の治療が終わったわけではありません。
くも膜下出血は、動脈瘤の治療が成功しても、その後に「脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)」を起こして予後が悪くなることがあります。
くも膜下出血を起こすと、発症後数日から約2週間の間に、脳の動脈が収縮して細くなります。これが脳血管攣縮です。下図右が正常の脳血管ですが、脳血管攣縮を起こすと下図左のように血管が細くなります。

特にくも膜下出血発症後3〜14日頃は注意が必要で、重症の脳血管攣縮では脳の血流が悪くなり、脳梗塞を起こすことがあります。
また、脳血管攣縮などに関連して、発症から数日遅れて脳の血流障害が起こる「遅発性脳虚血」という合併症もあります。
そのため、動脈瘤の治療がうまくいき、意識が回復して会話ができるようになった患者さんでも、その後に脳血管攣縮や遅発性脳虚血を起こして、重い後遺症が残ったり、命を落としたりすることがあります。くも膜下出血の治療では、血管攣縮や遅発性脳虚血を予防する薬剤などを使用し、脳の血流を慎重に管理します。
発症後約2週間の危険な時期を乗り越えて、ようやく治療がひと段落したと言えるのです。

10.くも膜下出血を予防するには?

くも膜下出血の予防には、まず脳動脈瘤ができたり、破裂したりする危険性をできるだけ減らすことが大切です。特に重要なのは、高血圧の管理と禁煙です。また、過度の飲酒を避けることも大切です。
もう一つは、脳動脈瘤を破裂する前に発見することです。
脳ドックなどで行うMRI検査では、脳の血管を調べ、未破裂脳動脈瘤が見つかることがあります。約5%の方にMRIで偶発的に未破裂脳動脈瘤が見つかるという報告もあります。なので、くも膜下出血の家族歴がある方などでは、脳動脈瘤の有無を調べることを検討してもよいと思います。

当院では、小さな動脈瘤の場合は経過観察でよいことも説明し、動脈瘤の部位や形状にもよりますが、5mm以上であれば専門病院での精査を勧めています。また、5mm未満でも破裂リスクが高いと考えられる場合には、専門病院への紹介を検討しています。

11.最後に

突然の今まで経験したことのないような頭痛が、くも膜下出血の特徴です。
発症した瞬間がはっきりわかる頭痛や、数秒から1分以内に痛みが最大になる頭痛では、痛みが少し落ち着いたとしても安心せず、速やかに救急受診することが大切です。
今後は、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤や、その治療法であるコイル塞栓術、さらに最近の新しい血管内治療についても紹介していきたいと思います。

参考文献
・Hoh BL, et al. 2023 Guideline for the Management of Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage. Stroke. 2023;54–e370.
・Molyneux AJ, et al. International Subarachnoid Aneurysm Trial (ISAT) of neurosurgical clipping versus endovascular coiling in 2143 patients with ruptured intracranial aneurysms. Lancet. 2002;360:1267–1274.
・Morita A, et al. The natural course of unruptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. N Engl J Med. 2012;366:2474–2482.

おくだ脳神経外科クリニック
院長 奥田 智裕
脳神経外科専門医
脳血管内治療専門医

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